予防と生活の質の関係

予防と生活の質(QOL = Quality of Life)の関係

健康寿命

日本人の平均寿命は、男性が80.21歳、女性が86.61歳で(平成28年 厚生労働省)、日本は依然として長寿国となっています。しかし、長寿国と聞くと聞こえは良いですが、実際のところはどうなのでしょうか。

厚生労働省は長寿の発表とは別に、「健康寿命の延伸」についても掲げています。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。いくら寿命が延びても、要介護にはなりたくないものです。

平均寿命と健康寿命の差

日本人における、平均寿命と健康寿命の差はどの程度の差があるのでしょうか。

平成28年の報告では、平均寿命と健康寿命との間には、男性では約9年、女性では約12年もの差があると報告されています。つまり寿命が尽きるまでの約10年程度は要介護などの状態でいることを示しています。

歯と健康寿命の関係

下の図は、愛知県知多半島で、65歳以上の住民を、3~4年の間追跡したもので、

  1. 歯が多く残っている人
  2. 歯が少なくても義歯(入れ歯)をしている人
  3. 歯が少なくて義歯(入れ歯)もしていない人

とを比較して、認知症発症のリスクついて調査した結果です。これによると、歯がほとんどなく、義歯(入れ歯)もしていない人が最も認知症発症のリスクが高いことが示されました。

また、兵庫県香美町では平成23年、80歳全員の調査をしており、80歳になっても20本以上の歯が残っている方が20年間で約3倍になっており、その方々の場合、自家用車に乗っている率、携帯電話を保有している率が高いという調査結果が出ています。

つまり、歯の多い人ほど認知症になりにくく、転倒も少ない、そして、歯を失っていたとしても入れ歯等を使用している場合には、疎でない人と比べて認知症になりにくく、転倒も少ないということがわかってきています。

8020運動について

8020運動は、平成元年から当時の厚生省と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上歯が残っているようにしよう」という運動です。20本以上の歯があれば、不自由なく食事を楽しむことが可能だからです。

この運動の甲斐あってか、平均歯数は全年齢層において増加してきています。ただ、依然として、人の長寿化に対して、残存歯数が長寿に追いついていないといった現状にあります。そのため、定期的な歯科医院でのメインテナンスが、より一層、大切になってきています。