歯を失うと起こること
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歯の移動のリスク
歯を失った場合、抜けたままで放置してしまうと、様々な影響が出てきます。
周りの歯や対合する歯が移動してくる
結果として、本来歯があった位置から複数の歯が動いてしまうことで、噛み合わせが悪くなってしまうリスクがあります。
顎の骨が痩せてくる
他の歯の喪失へと拡大するリスク
1本の歯を失い、放置していることでさらに多くの歯を失ってしまうこともあります。ブリッジ治療や入れ歯治療も、他の残された歯に負担がかかりますし、歯周病を放置すると、当然他の歯にも失った歯と同様なことが起きる可能性が高くなるからです。
ブリッジ治療の場合
歯を失い、ブリッジにした場合、両隣の歯を削る必要が出てきます。ブリッジはポピュラーな治療法ではありますが、ブリッジを支える土台となる歯(支台歯)にはどうしても負担がかかってしまいます。そのため、支台歯を痛めてしまったり、二次虫歯などで、歯を失い、また隣の歯を削って長いブリッジにして、といったことも少なくありません。
部分入れ歯の場合
さらに多くの歯を失った場合のリスク
さらに多くの歯を失ってしまった場合には、適切な栄養摂取がしずらくなったり、体のバランスに影響が出たり、認知症のリスクが上がったり、平衡感覚保持が悪くなり、転倒のリスクが上がることも考えられます。しっかりと噛めるということは健康の維持にとても大切な関りをもっているため、歯周病で歯を失わないようにすることが大切です。
栄養摂取のリスク
歯の多い人に比べ、歯を失っている人ほど、ナッツ類などの硬いものが食べれなくなり、ビタミンなどの摂取量も残存歯数に比例して減少することがわかっています。また、残存歯数が少ないほど、メタボリックシンドロームの傾向が強くなることもわかっています。
転倒のリスク
厚生労働省は、2003 年、愛知県在住の 65 歳以上の健常者1763名を対象にアンケートを行い、調査開始時点で過去 1 年の間に転倒がない者のうち、3 年後の時点での過去 1 年の間の転倒と、残存歯数、義歯(入れ歯)使用の有無との関係を分析したところ、歯が 19 本以下で義歯(入れ歯)を使用していない人は、転倒のリスクが高くなることがわかり、歯が 19 本以下でも義歯(入れ歯)を入れることで、転倒のリスクを約半分に抑えられる可能性もわかりました。
※歯数が20 本以上の人に対し、 19 本以下で義歯を使用していない人の転倒リスクは 2.50 倍、19 本以下で義歯を使用している人の転倒リスクは 1.36 倍でした。
噛む能力と認知症
厚生労働省は、噛む能力が低く、かかりつけの歯科医院がない人ほど、認知症発症率が高くなるという研究結果を発表しました。歯が20本以上残っている人に比べて、歯が数本で入れ歯を使わない人の認知症リスクは1.9倍に、かかりつけの歯科医院がある人に比べて、かかりつけの歯科医院がない人の認知症リスクは 1.4倍 になるということがわかっています。
残存歯数と認知症の関係
東北大学医学部 歯学部合同研究によると、残存歯数と認知症発症リスクの関係で、残存歯数が少ない人程、認知症になりやすいということがわかりました。
脳が健康と判断された高齢者の場合、平均14.9本の残存歯数が、認知症の疑いありとみなされた高齢者の場合、平均9.4本の残存歯数と、大きな開きのあることが判明しました。
さらにMRI検査ででも、残存歯数の少ない人程、大脳の容積が小さくなっており、記憶をつかさどる「海馬」という部分や、高度な知的活動にかかわる「前頭前野」などの部分が著しく縮していたと報告されています。
残存歯数とアルツハイマー型認知症
「アルツハイマー型認知症」は、脳に萎縮が起きることが特徴の認知症です。CT検査による調査では、残存歯数が少ない人ほど脳の萎縮が進んでいたという報告があります。そして、アルツハイマー型認知症の人の方が、健康な人よりも残存歯数が少なかったとい結果があります。また、アルツハイマー型認知症の患者の脳から歯周病菌が発見されるなど、歯周病とも何らかの関係があるとみなされており、最近の研究ではその点についてもより明らかになってきています。
さらに、噛むことが脳を活性化することもわかってきており、噛むことは、その刺激が歯根膜へ、そして歯根膜から脳へと伝わり、アセチルコリンという脳伝達物質を増やすのです。この汗鶴コリンの量が減るとアルツハイマー型認知症を引きおこす原因になると考えられています。